仏像のここが面白い!~明王編~
この記事では、仏像の中でも明王にスポットを当て、ご紹介します。
明王の詳細
明王(みょうおう)とは、恐ろしい顔が特徴の仏さま!
あえて恐ろしい姿をすることで、お釈迦様の教えに従わない人を、正しく導く役目を果たします。
ここでは、代表的な明王を紹介します。
力強いパワーを秘めた明王のお姿とは、どのようなものなのでしょうか?
・五大明王
明王の代表的なグループです。
密教(大日如来が本尊とする仏教)において、不動明王を中心に配置される明王の構図のことをいいます。
不動明王(ふどうみょうおう)
…五大明王の中心的明王。大日如来が姿を変えて現れたお姿だともいわれています。
大日如来については、こちら(仏像のここが面白い!~如来編~)をご覧ください。
不動明王は、動かざる守護者という意味を込めて、不動といわれています。
軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)
…南方に配置される明王。
宝生如来(ほうしょうにょらい)が姿を変えて現れたお姿ともいわれています。
宝生如来とは、全ての存在には絶対の価値がある!という考えを具現化した如来です。
軍荼利明王は生きた蛇を首と手首に、ネックレスとブレスレットのように巻いています。
頭には髑髏(どくろ)が置かれています。
降三世明王(ごうざんぜみょうおう)
…東方に配置される明王。
阿閃如来(あしゅくにょらい)が姿を変えて現れたお姿ともいわれています。
阿閃如来とは、迷いに打ち勝ち、物事に動じない強い心を授ける如来です。
降三世明王の名前の語源は、過去・現在・未来にある煩悩を追い払うこと、つまり“三つの世界を降伏するもの”という意味です。
降三世明王には、有名な逸話があります。
インド神最強のシヴァ神こと大自在天(だいじざいてん)とその妻烏摩妃(うまひ)が、大日如来の説法中に、仏教の教えに従わず煩悩にとらわれていました。
そこに降三世明王が現れ、二柱を倒したという逸話があります。
その逸話から、降三世明王はシヴァ神と烏摩妃を踏みつけたお姿が多いです。
大威徳明王(だいいとくみょうおう)
…西方に配置される明王。
阿弥陀如来または文殊菩薩が姿を変えて現れたお姿ともいわれています。
阿弥陀如来については、こちら(仏像のここが面白い!~如来編~)をご覧ください。
文殊菩薩については、こちら(仏像のここが面白い!~菩薩編~)をご覧ください。
大威徳明王の名前の語源は“閻魔を倒すもの”という意味。
水牛に乗ったお姿と足が三本以上あるお姿、は大威徳明王の大きな特徴の一つです。
金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)
…北方に配置される明王。
不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)が姿を変えて現れたお姿ともいわれています。
不空成就如来とは、悟りの境地のうち“成すべきことを成し遂げる”という智慧(ちえ)を具現化した如来です。
5つの目を持ち、過去・現在・未来の悪い欲を見つけます。
金剛夜叉明王は、見つけた悪を飲み尽くし、心を綺麗にしてくれます。
・その他の明王
愛染明王(あいぜんみょうおう)
…愛欲・煩悩を捨てるのではなく、悟りを求める心へと導く役目の明王です。
6つの手があり、どれかの手には弓矢を持っているのが特徴です。
西洋のキューピットのようですね。
肌は全身真っ赤に染まっているお姿も、愛染明王の特徴です。
仏像の特徴
恐ろしい顔が特徴の、明王!
しかし、明王が仏像として彫られた時、他にも色々な特徴があります。
仏像として彫られた明王について、詳しくみていきましょう!
・台座
乗っているものは、明王によって違います。
例えば…
- 不動明王は、瑟々座(しつしつざ)という岩を表したものに座っています。
- 愛染明王は、宝の壺の上に座しています。
・足元
基本的に裸足です。
・衣服
条帛(じょうはく)という左肩から右脇に向けてかけられた細い布を肩からかけています。
・手
明王によって、持っているものが違います。
例えば…
- 不動明王は、宝剣(ほうけん)という剣と羂索(けんさく)という縄を持っています。
羂索というのは、5色(青・黄・赤・黒・白)の糸をよった縄です。
仏教において、善の道へと導くことが難しい人を降伏させるという意味を表します。
- 愛染明王は、弓矢の他に金剛鈴(こんごうれい)という鈴を持っています。
・背中
火焔光背(かえんこうはい)という、勢いよく燃える炎を背負っていることがあります。
・髪の毛
仏像によって様々な髪形をしています。
束ねた髪を、左肩に垂らした髪形。
髪の毛が逆立ち、怒りを表す髪形。
などがあります。
まとめ
明王について、いかがだったでしょうか?
明王は恐ろしい顔をしていて、観るのが怖いと感じてしまうかもしれません。
しかし、恐ろしいには意味がありました。
私たちが悪い道へと落ちないように、導いてくださる為でした。
この記事を読んで、明王の仏像を観てみたいと思っていただけたら、嬉しいです。
参考文献:『仏像を観る』奈良国立博物館
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