仏像のここが面白い!~天編~

仏像のここが面白い!~天編~

この記事では、仏像の中でも天にスポットを当て、ご紹介します。

天の詳細

天は、元々インドの古い時代からいた神さまたち。

如来・菩薩・明王にはなかった、男神・女神という性別による区別があります。

仏教に帰依(仏教だけを信仰すること)した後も、それぞれ大事な役目を担っています。

ここでは、代表的な天を紹介します。

・四天王(してんのう)

後述する帝釈天に仕える4柱の天の総称。

須弥山(しゅみせん)という山の中腹で、四方を守っています。

持国天(じこくてん)

東方を守る天。

名前の意味は“国土を保つ者”。

剣を持っているお姿が多いです。

広目天(こうもくてん)

西方を守る天。

名前の意味は“特別な目を持つ者”。

筆と巻物を持っているお姿が多いです。

増長天(ぞうちょうてん)

南方を守る天。

名前の意味は“増大・増長する者”。

戟(げき)を持っているお姿が多いです。

多聞天(たもんてん)

北方を守る天。

名前の意味は“多くの説法を聞く者”。

塔を持っているお姿が多いです。

・十二神将(じゅうにしんしょう)

薬師如来に仕える12人の将軍の総称です。

薬師如来については、仏像のここが面白い!~如来編~をご覧ください。。

それぞれ7000人の部下を従えています。

後世になると、同じ十二という数字から、十二支獣と結び付けて考えられるようになりました。

ただし、文献によって様々な表記があり、不確かな部分もあります。

以下は、名称の一例です。(奈良国立博物館HP参照)

子…毘羯羅(びから)

丑…招杜羅(しょうとら)

寅…真達羅(しんだら)

卯…摩虎羅(まこら)

辰…波夷羅(はいら)

巳…因達羅(いんだら)

午…珊底羅(さんてら)

未…頞儞羅(あんにら)

申…安底羅(あんてら)

酉…迷企羅(めきら)

戌…伐折羅(ばさら)

亥…宮毘羅(くびら)

文献によっては、対応する十二支獣が違う場合があります。

・その他の天

帝釈天(たいしゃくてん)

…神さま時代の名前はインドラ神(雷神)。

仏法を守護する役割を担っています。

後述の梵天とセットでまつられます。

梵天(ぼんてん)

…神さま時代の名前はブラハマー神

お釈迦様が赤ちゃんの時からずっと守っていたという伝説があります。

前述の帝釈天とセットでまつられます。

吉祥天(きちじょうてん)

…神さま時代の名前はラクシュミー

幸福と財産を与えてくれる役目を担っています。

美しい女神です。

仏像の特徴

如来・菩薩・明王と違い、天はお姿について共通する部分は少ないです。

しかし、共通する部分もあります。

今回は天の代表として、毘沙門天にお越しいただきました!

毘沙門天のお姿を観察しながら、天の仏像についてみていきましょう。

毘沙門天像

・台座

仏像によって様々です。

毘沙門天は、邪鬼(じゃき)という鬼を踏みつけていることが多いです。

・足元

(くつ)をはいています。

デザインは、仏像によって様々です。

・持ち物

天の役割によって、持ち物は様々です。

毘沙門天は、宝塔という塔と(げき)という武器を持っています。

・服装

男神は昔の中国の武人がモデルのお姿が多いです。

毘沙門天は甲(よろい)を着ています。

女神は昔の中国の貴婦人がモデルのお姿が多いです。

・頭の装飾

天によって、髪形やかぶり物は様々です。

毘沙門天は(かぶと)をかぶっています。

女神の天の仏像は、長い髪をまとめている姿が多いです。

女神の天の仏像は、宝飾で全身を着飾っていることもあります。

・表情

天が担う役目によって、表情は様々です。

毘沙門天は、厳しい顔をしています。

敵を威嚇するような表情です。

まとめ

天について、いかがだったでしょうか?

如来・菩薩・明王と比べて、

  • 男神・女神という区別がある点
  • 武人のような、戦う姿が多い点

などの違いがありましたね。

このコラムを通して、仏像観賞が少しでも楽しくなれば嬉しいです。

参考文献:『仏像を観る』奈良国立博物館